GS1 Datamatrixとは?|世界で注目される規格の最新動向

GS1 Datamatrixとは?

Datamatrixを使用したGS1コード

GS1 Datamatrixとは
GS1 DataMatrixは、GS1のルールに基づきデータが格納されたDatamatrixコードです。用いられるDataMatrixコードはECC200という規格をベースに作成され、従来のDataMatrixコードと区別するため、以下のようなルールが定義されています。

使用するコードDatamatrix
モデルECC200
GS1標準仕様の定義データの先頭に[FNC1]を配置する
AI(アプリケーション識別子)格納する情報の先頭に付加する識別コード。データの中身が何を示しているかを世界中のだれもが理解できる。AI(アプリケーション識別子)は、ISO/IEC15418にて規定されている。
可変長データの扱いデータの桁数が変化するもの(可変長データ)の後ろには区切り文字として[FNC1]を挿入する。これにより、バーコードリーダーで読み取った場合に[GS:0x1D]として出力されるように規定されている。

GS1とは?

GS1 Datamatrixとは
GS1とは世界110以上の国と地域が加盟する流通コードの管理及び流通コードの標準化に取り組む国際機関です。日本ではGS1 Japanという名称で組織化・運営されています。スーパーやコンビニの全ての商品に貼り付けられているバーコードが、私たちの身近なところにある流通コードとして最も有名で、世界で最も使われている流通コードです。

GS1に準拠していると何がいい?

GS1 Datamatrixとは
GS1 DatamatrixのようにGS1のルールに準拠したコードでは、商品コード(JAN/UPC等)のほかにも商品の製造日や食品の賞味期限、ロット番号など、さまざまなデータをGS1のルールに基づき格納することで、世界中どこの国の人がデータを見ても、中に入っている情報を理解することができます。
一般的なDatamatrixの場合、各社さまざまなデータを独自に格納しているため、コードを読み取った人には何を意味しているかすぐには理解できないことは想像に容易いかと思います。

GS1コードにはどんな種類がある?

GS1コードにはGS1 Datamatrixの他にも、GS1-128、GS1-Databarなどの1次元コードをベースにしたものから、電波で読み書きを行うRFIDタグを利用したものまで、いくつか種類があります。
その中でも特に利用頻度が多く、世界中で広く浸透しているのがCODE128をベースに作成されたGS1-128と、Datamatrixをベースに作成されたGS1 Datamatrixです。

 

GS1 DatamatrixとGS1-128コードの共通点と違い

GS1 DatamatrixとGS1-128コードの共通点

GS1 DatamatrixはGS1-128コードのはどちらも同じデータ構成です。そのため格納されるデータ量によっては同じデータを使うことができます。

識別対象AI桁数データ項目内容
出荷梱包0018桁SSCC(シリアル・シッピング・コンテナ・コード)物流・出荷単位の個別識別に使用するシリアル番号
商品管理01、0214桁GTIN(グローバル・トレード・アイテム・ナンバー)商品識別コード、または、物流単位(パレット等)の中に収納された、最大梱包レベルの取引単位(ケースなど)の商品識別コードを国際的に一意に識別するための番号
商品管理10
可変長バッチ/ロット番号製品識別のためメーカーが設定する記号番号 (ロット番号、バッチ番号、加工処理番号、シフト番号など)
商品管理11~176桁
商品管理202桁企業内で使用する
商品バリエーション
識別番号
GTIN を変更する必要はないがバージョン管理等を企業内で区別するための識別番号
商品管理21可変長シリアル番号メーカーが設定した製品個体番号
計量表示
30可変長計量単位不定貫(計量)商品の中に含まれる一個単位で計測できる商品の個数。

よく使用されるAI(アプリケーション識別子)の一例

GS1 DatamatrixとGS1-128コードの違いとは?

中身のデータ構成が同じ2つのコードですが、GS1 Datamatrixが注目を浴びている理由は大きく分けて2点あります。

【POINT1】GS1-128と比べ、GS1 Datamatrixは印字スペースを小さくできる
GS1 Datamatrixとは
1つ目のポイントはGS1 Datamatrixは、従来のスペースより小さいスペースに印字が可能な点です。

【POINT2】GS1-128と比べ、GS1 Datamatrixはデータ量を多くすることができる
GS1 Datamatrixとは
2つ目のポイントは格納できるデータ量が大幅に増えることです。
印字可能な面積が限られている場合や、大量のデータを扱いたいときなどGS1 DataMatrixがより最適に利用することが可能です。

 

業界別のGS1 Datamatrixの利用/検討状況のまとめ

小売/流通業界のGS1 Datamatrix利用/検討状況

小売/流通業界では、50年に渡ってJAN(EAN/UPC)コードが扱われてきました。同コードは私たちの生活に最も身近な流通コードであり、世界で最も印刷された流通コード、かつ世界で最もスキャンされている流通コードです。そんなJAN(EAN/UPC)コードと並んで利用されているのが、ITF(ITF14)。主に商品の輸送箱に印字されています。
GS1 Datamatrixは、これらの流通コードと併用して使用されることが検討されております。

2027年までに店舗レジ(POS)でGS1 Datamatrixをはじめとした2次元コードが読み取れる環境整備を推進しようとするプロジェクトが世界各国で進められています。

S1 Datamatrixが小売業界で採用が浸透した場合には、主に6つの効果が上がるのではないかと期待されています。

  1. 【期限切れ商品の販売防止】POSレジで商品の期限情報を読み取り、販売を防止
  2. 【店舗業務効率化】期限情報の確認を目視からバーコード読取となり、ミスなく素早い検品が可能
  3. 【食の安心・安全をお届け】日付やロット別などのきめ細かい情報提供が可能
  4. 【ダイナミックプライシングの導入】賞味期限をPOSレジで確認することにより、同じ商品の中でもより細かな値引きが可能
  5. 【複数のバーコードを1つに集約】1つのシンボルに様々な情報を集約
  6. 【売上アップ(!?)】賞味期限・ロットごとのデータ活用で高度な販売戦略を実現

 

特に4番目のダイナミックプライシングは電子棚札との連携により、賞味期限などを判定基準とし、同一商品を複数の価格で*自動調整することが可能となり、フードロス問題の解決にも繋がることが期待されています。

*アプリケーションで事前に設定した場合

またJAN(EAN/UPC)コードはこれまで同様に継続して使用されるため、GS1 Datamatrixの印字は以下のようなルールが設けられています。
【ルール1】JANコードと同じGTINを格納しなければいけない
GS1 Datamatrixとは
POSレジに繋いだバーコードリーダーがGS1 Datamatrixを読み取った際にシステムがエラーを起さないように、GS1 Datamatrix内にはJANコードと同じGTINを格納することが義務付けられています。これにより、JANコードを読み取った場合も、GS1 Datamatrixを読み取った場合でもPOSレジは同じ動きとなり、業務の妨げになりません。
 
【ルール2】JANコードと5cm以内に印字しなければいけない
GS1 Datamatrixとは
ルール1と同様の理由でどちらを読み取っても良いように、2つのコードは*5cm以内に印字することがルールとして設けられています。

*用途の異なるデータを格納した2次元コードを印字する場合は、印字位置を離すことが推奨されています。

医療/医用業界のGS1 Datamatrix利用/検討状況

医療・医用業界ではGS1 DataMatrixが標準採用されることが決定しており、メスやはさみなどの鋼製器具にはダイレクトに印字するためのガイドラインが制定されています。
その中でも高額医療機器を中心に採用されている独自のUDIが国内でも義務化されており、医療/医用業界ではGS1 Datamatrixが広く浸透し始めています。

食品業界のGS1 Datamatrix利用/検討状況

スーパーに並ぶ商品へのGS1 Datamatrixの記載のほか、食品加工メーカーや食品の原材料メーカーの出荷品に対して、原材料識別のためのバーコードガイドラインがGS1 JAPANより発行されたことを受け、GS1 Datamatrixをはじめとしたコードを用いた管理が推奨されています。

物流業界のGS1 Datamatrix利用/検討状況

現在、物流業界ではさまざまなバーコードが採用されていますが、その中でも最も使用されている流通コードとしては、配送会社の送り状に採用されるNW-7(Cadabar)や、輸送用ダンボールに使用されるITFコード(ITF14)などがあります。
その中で新たな取り組みとして、加工食品メーカーの自社内トレーサービリティを目的として、ITF14+αの情報を記載するためにGS12次元コードが活用されている事例が、がGS1 JAPANのWEBページ内で事例紹介として掲載されています。(https://www.gs1jp.org/standard/barcode/gs1-qr/carton/usecase1.pdf)

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この記事を書いた人

松岡 泰樹

松岡 泰樹

【じ】編集長 兼営業部SDR(セールスディベロップメントチーム) マネージャー。ひとり編集部として、イラスト制作からライティングまで全工程を担当。SDRでは導入前の機器選定・評価サポートから、現場改善支援、協業パートナーと連携したDX支援に従事。